スタジオジブリ プロデューサー 鈴木 敏夫さん(54歳)

 

「アカデミー賞候補生んだ、宮崎駿への直言」

 

出典:2003年2月22日(土) 朝日新聞 be on Saturday

記事:編集部・澤田歩

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 「スタジオジブリ」の映画企画は、この人の判断でスリリングに変わることがある。「千と千尋の神隠し」は典型だった。98年秋のある日。宮崎駿監督(62)が「もののけ姫」(97年公開)に続く作品と考えていたのは、20歳の女性が主人公の「煙突描きのリンだった」。それを、一言でお蔵入りさせる。

 

 「子どものための映画こそ、作るべきじゃないんですか」

「わかった。やめよう」

 

 即座に、監督は1年温めた企画をあきらめ、壁に張っていたイメージボードを片づけた。「年寄りには子どもの方がいきいき描けるはず」。そんな真意を読み取った監督は、「じゃあ、10歳の女の子を元気づける物語を作ろう」。徳間書店のアニメ専門誌「アニメージュ」編集者の時から25年間、「毎日話してきた」関係だからこそだ。徳間が宮崎監督らを迎えて、85年に設けたジブリでは、「となりのトトロ」などを一緒に作ってきた。

 

 01年夏に公開した「千と千尋」は、映画館に2350万人を集め、興行収入は国内最高の304億円。今年の米アカデミー賞にもノミネートされた。制作費は二十数億円。元を取るにはその3倍の60億円程度の興行収入を見込まないといけない。だが02年公開の邦画293本で、60億円を超えたのは1本のみ。そんなリスクに常に挑むので、この人の「攻め」の映画作りが際立つ。だから、ジブリ以外からも、「彼の力を借りたい」と映画人がやってくる。「攻殻機動隊」で海外から高い評価を受けた押井守(おしいまもる)監督(51)の「イノセンス」(公開予定は04年春)のプロデュースも、引き受けた。もちろん、宮崎監督の新作「ハウルの動く城」(同04年夏)の方も抜かりはない。

 

 「攻め」を支えるのは宣伝だ。タイアップ企業に対し、協賛金や前売り券買い取りは求めない。キャラクターを宣伝に使われても、使用料をとらない。代わりに、タイアップ広告などで、映画のイメージを最大限広めてもらう。「映画の成功が、あなたの会社の評判も上げる」と説きながら。

 

 「千と千尋」に協賛したローソンのマルチメディア部長、山崎文雄さん(47)には、初対面で「僕、コンビニが嫌いなんです」。裏表ない言い方が、逆に担当者の意気を引き出す。ローソンは前売り券につけるキャラクター人形作りの費用を負担したうえ、32万枚もさばいた。それは、コンビニ他社を悔しがらせるできごとだった。完成作のタイトルロールの「協力」に、会社名とは別に、こっそり山崎さんの名を入れた。山崎さんは、試写で号泣した。「僕はやじ馬」。なのに、いつのまにか輪の中心にいる。監督、スタッフ、協賛企業の心を一つにまとめ、「いい映画」をちゃんとヒットさせる。そこが、この人の真骨頂だ。

 

 

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